ビジネスの世界では、複数の仕事を同時にこなす「マルチタスク」は生産性向上に貢献しているのか?
私たちの脳は同時に二つ以上のことなんてできなくて、結局一つのことに集中した方が結果早く物事を終わらせることができるのだ、と論争が続いていました。
現代科学では脳の構造はほとんど解明されていないので、いろんな科学者がデータを取り、推察で物事を判断していたにすぎません。
今まさに最新の脳科学においてどの様な結果を導き出しているのかを見ていきましょう。
目次
個人でできる生産性向上の取り組み
生産性向上の手段はいろいろありますが、個人でもできることって結構あります。
一人一人が意識して改善していくことで大きな改善が得られることは間違いありません。
そこでどうしてもやりがちなのが「マルチタスク」です。
その「マルチタスク」の本質は思ってるよりずいぶん違ったものとなっています。
同時に2つの作業はできない
ある調査によると、72%の人がマルチタスクをしているといいます。
資料を作り終えていないまま、会議に行ったり、資料作成を中断して、お客さんと電話で話したり、、
こんな風に、マルチタスクが良くないと分かっていても、やめられない人も多いのではないでしょうか。
なんとマルチタスクで、98%の人がパフォーマンスが落ちるそうなのです。
あるタスクから別のタスクに移行する時だって、カンタンに切り替える…というわけにはいかないんです。
脳も、タスクからタスクへと切り替える必要があるとのこと。
やはり、同時に2つの作業はできません。
「ながら作業」でマルチタスクしているつもりでも脳は一つのことしかできません。
記事には「勘違いによるマルチタスクの効果」を掲載しています。
しかし、ミシガン大学のShalena Srna助教授は、「マルチタスクをしていると思い込む」ことには知られざる力があると話します。
Srna助教授が行なった実験で、「1つの作業をしているとい思い込んで作業をしている人と比べて、自分はマルチタスクをしているという認識のもとで2つの作業を同時にしている人は、高いパフォーマンスを発揮する」という結果が確認されました。
私たちは職場でも家庭でも常にいろんなことを同時にこなしています。
しかし実はその考え自体が間違っており、人間は本当の意味ではマルチタスクすることは不可能なのです。
マルチタスクはある意味幻想とでも言えるでしょう。しかしマルチタスクに対する認識を上手く活用すると思わぬ作用がありました。
私たちの研究では、「講義を聞きながら同時にノートをとってください」と伝えた被験者グループと、「ただ講義のノートをとってください」とだけ伝えた被験者グループでは、前者のほうが良いノートをとり講義の内容にもより集中していたという結果が出たのです。
結局のところ、マルチタスクをすると
1. 余計な時間がかかる
2. ミスが増える
3. ストレスが増える
という良くないことが発生するんです。
マルチタスクはやめられない
わかっているのに、なぜマルチタスクがやめられないのでしょうか?
もちろんそれには理由があります。
「ツァイガルニク効果」
「ツァイガルニク効果」
これは、達成できなかった事柄や中断している事柄に対して、より強い記憶や印象を持つという心理学的な現象です。
人間の脳は未完成のものに意識がいくようになっています。
例えば連続ドラマなど、気になるところでストーリーが途切れると「早く続きが知りたい」と強く意識してしまいませんか。
仕事もこれと同じで、中途半端でまだ終わっていないものに、強く意識が自然と占領されてしまうのです。
ドーパミンの影響
次に、「ドーパミンの影響」です。
脳はドーパミンを求めるようになっています。
ドーパミンは精神的な満足感を与える物質です。
この物質は、脳が新しい刺激を感じたときに分泌されるので、意識しないと次々と新しいタスクに気が占領されてしまうのです。
つまり、普通に仕事をしていると人は、心理学的にも脳科学的にも、自然とマルチタスクをしてしまうのです。
マルチタスクはIQを低下させる
この記事によると、どうやらマルチタスクが苦手な人こそマルチタスクをやりたがるみたいですね。
マルチタスクを頻繁に行う人の作業能率が低かった理由は、考えを整理し無関係な情報を排除することに苦労したことと、ある作業から別の作業へと移るのが遅かったからです。
要するに普段から脳を回転させていないということでしょう。
勘違いがパフォーマンスを向上させる
思い込みの素晴らしさを書いています。
自分は今マルチタスクをしていると思い込むと良いパフォーマンスが出せる
薬と思い込んで服用すると治ってしまう「プラシーボ効果」と似ていますね。
これこそが「良い勘違い」ですね。
また、仮に何か一つの作業でも、あえて細分化して複数の作業として捉えて作業をすることでパフォーマンスが向上するとのこと。
「バッチング」で生産性アップ
マルチタスク解消には「バッチング」が最適です。
タスクのバッチ処理は、似たようなタスクをまとめて一度に片付ける生産性アップ方法です。
このテクニックでマルチタスクを避けるタスク、集中できる時間を増やすことができます。
タスクのバッチ処理で先延ばしを減らし、生産性を上げ、高品質な成果を生む方法です。
タスクのバッチ処理では、似たようなタスクや同じプロジェクトのタスクを1時間枠にまとめてグループ化することです。
メールが届くたびに返信するのではなく、まとめて一度に返信するようなやり方がタスクのバッチ処理です。
慣れないうちは難しいかもしれませんが、コツをつかむことで最大限に活用することができます。
例えば、全ての作業を次の6つのカテゴリーに大まかに分けてみましょう。
・記事を書くこと
・新たなスキルの習得
・取引先とのコミュニケーションやプレゼン
・メール
・社内コミュニケーション
・統計・分析
そして、カテゴリー分けしたタスクを、なるべくまとめてやるのがバッチングです。
この場合、「メール業務をやる」と決めた時間はメールチェック・返信などの業務を一気に処理し、社内コミュニケーションには手を出さないようにします。
そうすることで、マルチタスクをすることが少なくなり、1つの仕事だけに集中して取り組むことができるようになります。
2つの簡単な方法
彼は2つの簡単な方法をおすすめしています。
1.五感の反応を妨げるものを極力排除
会話を始める前に、目を引くものや、音やにおいのするものを片付けるようにしましょう。
触覚に反応するのを防ぐため、人間工学に基づいたデザインの椅子を導入してください。
味覚については、食べたり、手に取ることに注意が必要な食べ物は避けてなければいけません。
2.精神を整える。
精神が生産性に与える影響は極めて大きく、クリアな頭で物事に取り組無用にしましょう。
未解決のタスクを、頭のなかに残しておくべきではありません。
具体的には、2つのやり方があります。
(1) 会話を始める前に、他の重要なタスクを、メモアプリやカレンダーに入力しておく。
これにより、他のタスクが整理され対処できていると脳が認識するため、会話の最中に他のタスクが気がかりになってしまうリスクを抑えることができます。
(2) 1日の予定に休憩を組み込む。
長時間の休憩を挟み込む必要はありません。
1分間何もしない、ということだけでも構いません。
少しでも休憩の時間をとることで、精神を安定させることができます。
個人でできる生産性向上の取り組みを9つの方法
個人の生産性をさらに高めたい場合は、実証済みの生産性テクニックをいつでも独学で学ぶことができます。
生産性に関して進歩している海外では当たり前の方法です。
選択肢はたくさんあるので、自分に合ったものを見つけることができます。
以下に9つ列挙します。
1.SMARTメソッド
SMART とは、Specific、Measurable、Achievable、Relevant、Time-Bound の略です。ピーター・ドラッカーによって最初に定義されたこの方法は、人々が現実的な目標を設定し、一貫性のある簡単な方法で作業することで目標を達成するのを支援するための段階的な順序です。
2.ポモドーロ・テクニック
Francesco Cirilloの時間管理テクニックは、タスクの間に定期的な休憩を挟んで 25分間の括りで作業するという単純なシステムに従います。Cirilloが大学生の頃にトマト型のエッグタイマーを使って作ったことから、トマトを意味するイタリア語にちなんで名づけられました。
3.パーソナルタグ
かんばんはシンプルですが効果的なプロジェクト管理手法です。必要なのは、「To-do」、「進行中」、および「完了」とラベル付けされた付箋だけです。テーブルの上で付箋を左から右に移動することで、タスクをどのように完了しているかを視覚化し、その日の他の責任の概要を把握するのに役立ちます。
4.イート・フロッグテクニック
マーク・トウェインの名言「朝一番に生きたカエルを食べれば、その日は何も悪いことは起きない」という言葉に着想を得た方法です。Brian Tracy は、この生産性ハックを1つのシンプルなコンセプトに基づいて組み立てました。最も困難なタスクを朝一番に終わらせれば、その日の残りの時間はずっと楽に感じられます。
5.MoSCoW法
この頭字語は、 “must have,” “should have,” “could have” and “would have.”「しなければならない」、「持つべき」、「持つことができる」、「持つであろう」の略です。これは、タスクを緊急度の高いものから低いものへと階層化する簡単な方法です。「しなければならない」タスクは、すぐに集中する必要があるタスク (重要なメッセージに返信するなど) であり、「したい」タスクは、将来自分自身に設定する漠然とした目標 (昇進するなど) です。
6.システム主義者の方法
コンピューターサイエンスの学生が考案したSystemistメソッドをTodoistアプリと組み合わせて、複数のワークフローを合理化すると同時に、他の仕事のバランスを取るのにも役立ちます。
7.Getting Things Done 物事を成し遂げる
David Allenの有名なGTDテクニックは、タスクをメールの受信トレイのように扱い、5つのカテゴリ (キャプチャ、明確化、整理、反映、関与) でタスクを指定することによって機能します。他の重要度の低いタスクを保存したり、ごみ箱に捨てたりできるようにすることで、ユーザーは一度に1 つのことに集中することができます。
8.Zen to Done
Zen to Done (ZTD) は、David AllenのGTDをさらに一歩進めたものです。GTD に適応するために必要な行動の変化に基づいて構築された ZTDは、人々が一時停止して自分のタスクについて考える必要をなくし、代わりに前進するように促します。熟考よりも行動を好む人にとっては、はるかに便利です。
9.ドント・ブレイク・ザ・チェーン
Don’t Break the Chain は、To Doリストにチェックマークを付けたすべての項目を、将来自分自身のより良いバージョンを構築するための別のステップと考えるようユーザーに促します。これは、個人の進捗を重視する人々にインセンティブを与える優れた方法です。
おわりに
生産性向上のために、面倒なタスクは午前中に終了させろ、だの、、、短時間の昼寝は生産性向上のカギ、だの、、、タスク管理アプリでしっかり管理、だの、、、いろいろな方法がありました。
そして、同時に2つの作業をこなす「マルチタスク」は生産性向上の最も大きな課題でした。
しかし2020年最新の脳科学では「マルチタスクをやってしまいなさい!」という結論です。
ドヤ顔で「マルチタスクやってんだぞ〜」ってアピールする方が「ジブンってすごいんだ」と勘違いしてパフォーマンスが向上し、集中力が良くなるということです。