人は理性ではなく感情で動く生き物です。
普段そんなこと意識しないですから、なんのこっちゃっと思ってしまうでしょう。
しかし、意識して人々をうまくコントロールすることができれば当然売上もアップするのです。
ブランディングにも通ずるそんな感情コントロールを見ていきましょう。
目次
感情マーケティングの効果:アメリカの調査で見えた顧客満足度の真実
最近、アメリカで行われた興味深い調査があります。
この調査は、商品やサービスに対する顧客の満足度が、実際の購入金額や利用頻度にどのように影響するかを探求したものです。
被験者は自身の満足度を5段階で評価し、その結果を購入金額や利用頻度と比較しました。
調査結果からは、満足している顧客が一般的により多くの支払いを行う傾向にあることが明らかになりました。
しかし、興味深いことに、満足していると答えた人々の中には、満足していない人たちと同じ金額や頻度で購入するグループも存在していました。
では、この違いは何によるものでしょうか?
この謎を解く鍵は、「顧客が何に満足しているか」にあります。
顧客の満足度は、合理的な要素と感情的な要素に分けられることが多いです。
合理的な要素とは、商品やサービス自体の機能や性能のことです。
一方、感情的な要素とは、商品を購入する前から利用後にかけて顧客が感じる価値です。
例えば、店員が親身に相談を聞いてくれた接客、他とは異なるデザインの商品、問題があった際の手厚いアフターサービスなど、測定しにくい付加価値がこれに含まれます。
調査では、「合理的に満足している」と答えた人々の購入金額や利用頻度は、満足していない人たちとほぼ変わらなかったのです。
しかし、「感情的に満足している」と答えた人々は、他の人たちよりも頻繁に利用し、平均して1.8倍多くの支払いをしていることが分かりました。
では、顧客を感情的に満足させるにはどうすれば良いのでしょうか?この問いに答えることが、感情マーケティングの成功への鍵となります。
感情マーケティングー代表的な3つの感情
どんな感情に訴えかければ人々の購買行動に変化が訪れるのでしょうか?
1. 愛情・・・よくあるマーケティングですが、子供への愛情などで温かみを表現します。
2. 恥、罪・・・後ろめたさを利用します。お返しをしていない後ろめたさで購入するという返報性のことです。
3. 見栄・・・ブランド品を購入する理由ですね。
具体的な例:フィットネスジム
例えばあなたがフィットネスジムを経営しているとしましょう。
最新設備や広いスペースをアピールするだけでは、必ずしも会員が増えるわけではありません。
人がジムに通いたくなる理由の一つは、健康への意識と美しさへの欲求だからです。
痛みを和らげる最新トレーニング方法や、リラックスできる施設の説明をすることで、顧客の不安を軽減することができます。
また、トレーニング後のビフォーアフターの写真を見せることで、自分もこうなりたいと思わせることができます。
感情マーケティングーパワフルな8つの感情
人間の基本的な「欲求」に付随する感情で、売上を大きく左右するのが8つの感情です。
1. 長生きしたいという感情
2. 美味しいものを食したい感情
3. 恐怖回避の感情
4. 性的欲求の感情
5. 快適生活の欲求
6. 勝利欲求の感情
7. 愛するものを守りたい感情
8. 社会的価値の欲求
さらに二次的欲求で感情訴求を促す
人々の欲求は果てしないものです。
さらに細かく分類した「後天的欲求」というものがあります。
1. 情報取得の欲求
2. 健康に対する欲求
3. 好奇心を満たす欲求
4. 効率を求める欲求
5. 便利を求める欲求
6. 質の高さを求める欲求
7. 倹約する欲求
8. 宝物(掘り出し物)を見つける欲求
感情マーケティングーお客さんは「メリット」を購入する
人々は何もその商品自体が欲しかったりするのではありません。
その商品の最終的なメリットを購入しているのです。
なので顧客に価値を与えないことには購入意欲は湧きません。
高級車を買うのは、快適性や見栄を晴れるからなのです。
新聞を読むのは情報を得るという欲求を満たせるからです。
感情マーケティングー利益よりも損失回避
今、あなたには2つの選択肢が提示されます。どちらを選ぶでしょうか?
- A. 確実に5000円を手に入れる
- B. さいころを振って、出目が1のときのみ1万円を獲得する
直感で選んでみてください。
多くの人は「A」を選ぶことでしょう。
この実験は、人が利益や損失の「見通し」を基に決断を下すことを示しています。
同じ5000円の期待値であっても、人の脳は合理的に判断しないことがあります。
これを「プロスペクト理論」と呼び、脳が利益や損失の見通しを元に判断することから名付けられました。
この理論によると、損失の影響は利益の2倍とされます。
人間の動機は、損失が予想されるときに利益が予想される時の2倍の強さになることがわかっています。
ほとんどの人は、確実な5000円を選び、高い確率で1万円を獲得するリスクを避けます。
これは、脳が既に5000円を自分のものと感じているため、それを失うリスクが動機を強めるからです。
損失回避マーケティング
「ヒトは得することよりも損したくない」というように考える生き物なのです。
利益による快感よりも損失の恐怖の方が強いのです。
例えば1万円を得する心理的な価値は、2.5万円を損する心理的な価値と同等になります。
感じる損得の比率は、およそ 1:2〜2.5 と行動経済学で言われています。
損失の恐怖は2.5倍なのです。
よく宗教などは危機感を煽って信者を増やそうとします。
「ツボを買わないと不幸になる」というのは極端な話ですが、幸せに焦点を当てず、「不幸」をクローズアップします。
病気になるよ、と煽ったりして「損失」に焦点を当てるのです。
損失回避という感覚を刺激するためには、恐怖を取り除く提案をすることが大切です。
例えば、「◯日お試し無料」、「全額返金保証」、といったオファーをします。
不安を回避しようとする心理
気をつけなければ危ないのがこの心理です。
どこかの宗教家もよく使用します。
しかし、闇雲に不安を煽るだけではマーケティングの世界では通用しません。
例えば、若者に交通死亡事故の衝突の写真を見せてもあまり効果がありません。
命を失うことにあまり実感が湧かないのです。
若者にイチバン効果があるのは免許をとりあげることなのです。
運転できなくて母親に送り迎えしてもらっている情けないシーンを想像させてあげればいいのです。
例えばダイエットの場合。
若者にとっては、 太っていると「病気になるリスクが上がる」といった警告よりも、
「夏にプールや海でひどい体型をさらしたくないですよね?」 といった警告の方が、相手をジムに通わせる原動力になるのです。
そして警告を使うときは、「これをしなかったら、あれが起きる」と言う公式によってを示すことができます。
例えば「税金を払わなかったら、刑務所に行くことになる」「 野菜を全部食べないと、デザートをあげませんよ」などです。
その人にとって何が感情を動かすのかをよく考える必要があるのです。
相手が最も恐れていることに焦点を当てることが重要です。
見込み客の緊急度を2倍に
セールスで見込み客の決断の緊急度を2倍にすることができます。
利益を提示するより、損失に対する恐怖や危機感を刺激する方が成功しやすいです。
相手の脳は、失われるものに対して倍の価値を与えます。
緊急度を上げる具体例
「御社では今年、製品改善による顧客満足度の向上を目標にしていますね。昨年の顧客満足度はどれくらいでしたか?」
「80%です」
「なるほど、では今年は90%を目指すということですね」
「はい、そうです」
「現在、御社の顧客数が1000人であれば、その全員が高い満足度を求めるわけです。では、御社全体でどれくらいの顧客満足度を向上させる必要があるのでしょうか?」
ポイント:正しい数字を提示する
ここでのポイントは、現状維持に代償があることを明らかにし、それを具体的な問題として提示することです。
この場合、顧客が昨年並みの満足度しか得られなければ、顧客満足度の向上の機会を逃す危険があります。
最後に、これはただ脅すわけではなく、適切な数値を提示して、相手に正しい判断を促すことが大切です。
感情マーケティングー安心・安全の対価
最近、「SDGs」や「コロナ」の影響で「安心・安全」が特に叫ばれています。
エネルギー高不安から光熱費を抑えるための高額な商品が売れたり、環境不安から高額なSDGs的商品が売れたり、事故やあおり運転に対する不安から安全機能が充実した自動車が標準となっています。
したがって、私たちも、改めて「安全・安心は有料(付加価値)になった」という現実です。
遠慮なく自社の商品・サービスの見直しを行い、単価アップに向かって邁進しましょう。
コロナ禍で環境整備にお金をかけて安全・安心をアピールするだけでは意味がありません。
あなたが、提供する商品・サービスが変わらなければいけません。
設備投資も含めて考えていきましょう。
重要なのは、仮に価値があったとしても、ライバルよりもちょっと高額なくらいでは安全・安心を感じにくい(むしろ不安になる)消費者も多いということなのです。
どういうことかと言うと「価格は2倍だけど、効果は5倍!」などとはっきり伝えられた方が圧倒的に強いのです。
お客さんに安全・安心を提供できているか、そこに付加価値はあるか、その対価をきちんと回収できているか、いま一度検討してみましょう。
キャッチコピーだけではなく目に見える具体的な安全・安心を提供していきましょう。
危機感には5つある
購入時には5つのリスクを感じ得ると行動経済学者は言っています。
1.金銭的なリスク
商品を購入するときにお金を失うというリスクです。これで損するかもしれないな。これを買ったらお金がなくなってしまうというリスクです。
2.機能的なリスク
うまく動かないかもしれない。期待通りに動かないかもしれない。商品を購入したけど、それがきちんと使えないのではないか?といった、商品の機能についてのリスクです。
3.肉体的なリスク
ちょっと危険かもしれない、怪我をするのではないか?これは商品を購入するときの不安というよりも、人が行動する時のリスクで、やってみたら失敗するのではないか?といった肉体的なもの。
4.社会的なリスク
これを買ったら周囲の人がどう思うだろう?というものです。バカにされるんじゃないか?といったリスクです。
5.心理的なリスク
これを買ったら後ろめたく感じるのではないか、無責任だと感じるのではないか。という購入時に対しての心理的なリスクです。
テンションリダクションを効果的に利用するなら5種類をうまく使い分けることも必要です。
まずは一つずつリスクを取り除いてあげなければいけません。
機能的なリスクに関しては「保証」を付けてあげましょう。
社会的、心理的リスクに関しては「人気NO1」と謳いましょう。
社会的地位(ステータスポジション)に影響を与える?
「その購入はあなたの社会的地位を上げることに寄与していますか?」と人々は常に心の中で質問しています。
社会的地位が上がりそうだなと思ったら購入するものです。
高級車を買うのはそういった理由があります。
見栄とは、そういった社会的地位に見られたいからなのです。
感情マーケティングー努力したくないという感情
人がモノを買う理由の一つとして「努力をしたくないから」があります。
この商品やサービスがあれば努力しなくていいとしたらどうでしょう?
あなたの商品にはそんなメリットがありますか?
あなたのコンサルティングを受けていればムダな努力をしなくても大丈夫ですか?
あなたの学習塾は最小の努力で合格させる術がありますか?
あなたのエステは努力なくして痩せることができますか?
感情マーケティングー保証をつける
上記「金銭的リスク」を回避するために「返金保証」があります。
買い手の不安を払拭することができる素晴らしい手法です。
「全額保証付き」と強力アピールです。
そして保証期間はなるべく長く、簡単に、スピーディーにできることを謳いましょう。
時には「倍額返金」などで商品やサービスの高品質に自信を見せることも必要でしょう。
そしてその返金保証にオリジナルのネーミングを付けてキャンペーン化しているくらい当たり前で当然のことだという認識を植え付けるのです。
感情マーケティングー販売リダクション
大人気TVドラマの「相棒」、水谷豊扮する杉下右京がいろんなヒトに捜査中「それからもう一つ」と帰り際に質問するシーン。
刑事がやっと帰ってくれるということもあって今まで緊張していたのが緊張も解ける瞬間の出来事。
安心からつい口も軽くなってしまうことがあり、ついしゃべってしまうシーンがよく見られます。
右京さんは緊張の糸が解けた瞬間を逃さず追求するわけです。
上手く心理的効果を活用しているのです。
販売の分野でも似たような現象があります。
売上アップの手段として意識して活用してみると面白いのではないでしょうか。
心理学で「テンション・リダクション=緊張の緩み」と呼ばれ、コンビニやスーパーでレジ前の商品を買ってしまうのも、緊張の緩みが原因の1つです。
ヒトは、お金を払って買い物を済ませた瞬間、緊張の糸がほどけて、無防備な状態になります。
そんな時に、何かを勧められると、冷静な判断ができず、”つい買ってしまう”という心理状態になってしまいます。
では、どうすれば、買い過ぎを予防できるのか?
買い物でも、必要なモノをすべて買ったという安心感が気の緩みを引き起こします。
なので、支払いを済ませた後に「これでおしまい!」と意識しましょう。
これだけでも随分と違いが出てくるはずです。
よくネットショッピングとかではこのテクニックって使われていますよね。
購入終了後にまたオススメしてくるネットショップって多いですよね。
つい買ってしまいません?
まんまと術中にはまってしまっているわけです。
おわりに
心理的効果をむやみに使うのはオススメしません。
前提として良い商品、良いサービスを提供していることが前提となります。
この前提条件をクリアして初めて思いっきりいろんなマーケティングをためしてみる価値があります。
今の時代良い商品やサービスは当たり前です。
でも漠然と売っているだけでは誰も見向きもしません。
まずは、お客さんに手に取ってもらわないと良さが伝わりません。
これはまさしく営業スキルと同じなのです。
立派な販売心理学なのです。